2010年6月15日

「老人賭博」読書感想(3日坊主49巡目-2)

老人賭博/松尾 スズキ
¥1,400
Amazon.co.jp

大人計画主催・松尾スズキの「老人賭博」読みました。


図書館で予約をしていたこの本、

偶然にも相撲の野球賭博問題がメディアで大々的取り上げられているのと

同時期に読むことになるとは…


内容としては、

映画に初めて主演した脇役の名人俳優(老人)が、

ロケの本番で何回トチるかを、

主人公やその師匠、出演者が賭けるというもの。


主人公は顔面の奇病を患い、手術費用の大借金からやっと逃れた青年(20代)。

なぜか脚本家兼演出家兼俳優の(松尾スズキっぽい感じの)センセイと出会い、

師弟関係を結ぶ。


そこで映画ロケについていき、

前述の老人をネタとした賭博の場に出くわす―

そんな感じです。


いやぁ、タイトルの意味が、そういう意味の賭博とは。

読んでいるうちに、賭博の面白みがなんとなく分かってしまうのも怖い。

ストーリーの最後、長台詞に対して何回トチるかという大賭博の結末は

どうなるのか手に汗を握る・・・というよりも面白すぎて先が気になって仕方なかったです。


ストーリー前半は主人公の経歴部分のようなところが長くてなかなか先に進めなかったけれど、

老人をダシにして賭博をしはじめたところから一気に読むスピードが加速。

後ろの半分は一気に読みました。

それほど、賭博部分が面白いということ。


それと、舞台やエッセイ、紅卍などを見て松尾スズキの書く世界観には慣れているのか、

世界観に違和感やストレスを感じずにすらすら読めた。

皮肉やシュールな部分もいちいち「皮肉だな」「シュールだな」と思わずに自然に読める。

それほど松尾さんの文体が好き、ということかもしれない。


話の内部に出てくる、「性善こそが本当の悪」とか、

ギャンブルというのは「神の視線の外に」出る行為だとか、

とても深く、でもなんとなく頷ける、

松尾さんならではの、世界を斬る感じがたまらなく素敵でした。


ベタ褒めしていて気持ち悪くなってきたので、

ひとつだけ残念なことを。

最後の最後、大ラスの展開が読めたのと、

その最後の主人公の最後の心情がよく分からなかったです。


ラストの心情は、ブログに書かれていた書評でなんとなく分かったけどね。


今は、

結局は紛れもない現実を頑張んないといけないんだな~~~って、

そんなふうに思っています。


賭博を話の題材にしたのは、

松尾さんが映画「カイジ」に出演していたからかな?

なんて思ったり。


でもこの本読むと、

賭博が世間の裏側で当たり前のように行なわれていてもおかしくないなぁ~って思っちゃう。

賭博についてはこれ以上ブログで書くことではないと思うので、書かないけど。


そんな感じで、

読み心地の良い1冊なのでした。


好き嫌い分かれると思うけど、

あたしは好きです。この本。