2010年6月5日

コクーン歌舞伎「佐倉義民傳」観劇レポ(3日坊主46巡目-1)

コクーン歌舞伎「佐倉義民傳」観てきました。

演出はすごい。
メッセージ性もあり強い信念を感じた。
中村勘三郎ほか演技者も安定していて文句なし。
本物の畑を使う舞台装置も斬新で良いし、
歌舞伎なのにラップを使っているところも現代文化との融合を感じ素敵と思った。

ただ、いつものコクーン歌舞伎ほどの感動が得られなかった。

話は江戸時代。
下総・佐倉、領主の圧政のもと農民が貧困している生活を救うべく、名主の木内宗吾が立ち上がり、自分の命をかけてまで、江戸にいる将軍に直訴をしに行く。
なんというか、宗吾がいい人すぎて…
パーフェクトすぎて、
人間臭さというのかな、感情移入する隙間がなかった…。

もちろん、家族との別れや、恨みつらみを言う部分は見ていて悲しくなるけど、
「三人吉三」とかの時に感じた、終演後まで空いた口が塞がらず、ずっと余韻に浸っている、あの感情は湧いてこなかった。
頭ですぐ納得して、スッキリ終了、そんな感じでした。

伝えたいこととしては、
「立ち上がれ」
「みんなが笑って暮らせる社会になれば」
「子供はパワーだ」
そんなところかしらん。
不況で無気力な人たちが多いけど、
何かあったらみんなで声を上げて立ち上がれってことだと思う。
ストレートに伝わってきた。

ひとつ気になったのは、
この「立ち上がれ」ってメッセージは、
不況に喘ぐ苦しい生活をしている人たちに主に向けていると思うんだよね。
派遣村にいた人たちとか。

でも、このお芝居を観ているのは、
観劇に福澤諭吉を費やせるような、わりと優雅な人たち。
メッセージを伝えるべき人が違うと思うんだなぁ。

このメッセージを本当に強く伝えたいんなら、場所はコクーンではないべき。
浅草とかに掘っ立て小屋を作って、格安(3000円とか)でやるべき。
もっと今頑張るべき人たちに観てもらわなくっちゃ。

客層はやや高年齢。
後ろに行くほど若い人たちが増える。立ち見とか。

週末だからか、普段歌舞伎を観ているような人が少なかったのかな、
「中村屋!」と叫ぶ大向こうが少なかったのが残念。
これが聞こえないと、歌舞伎観てるって 気がしないよ。
だから平日に観れるなら、平日の方がオススメかも。

野田地図とかメッセージや技巧派演出の好きな方にはオススメの舞台だと思います。