2011年8月28日

舞台観劇感想「現代能楽集Ⅵ 奇ッ怪 其ノ弐」(3日坊主12巡目ー1)

世田谷パブリックシアターで「現代能楽集Ⅵ 奇ッ怪 其ノ弐」を観てまいりました。
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2011/08/post_242.html

其ノ壱の立場にある「奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話」を観たことがあり、
現代と小泉八雲の怪談回想シーンとが境界ぎりぎりですっと行き来するあの感じが好きでしたので、
今回も過去(回想シーン)と現実の行き来がとても素敵でした。

どこが狂言や能っぽいのか、
両方を全く観たことがないので全く分かりませんでしたが、
不思議な夢のような世界と現実との交錯を描くのは脚本&演出・前川知大さんの得意分野と言っても過言ではないでしょう。

ネタバレがあると嫌なのであらすじについては詳しくは書きません。
ただ、思ったのは、
「震災以降、戯曲のテーマや表現方法が変わったな」
ということ。

今回の芝居の舞台は、硫化水素ガスによって廃墟となった街の神社。
そのガスは、地震のせいで噴き出したとか(と自分は認識しているがどうなのでしょう)。

元気だった街が地震により一気になくなり、
沢山の犠牲者が出る。
その人達の魂はどうなるのか…
無事に成仏できるのか…
そんなことを考えさせられました。

近い日程で上演されていた「奥様お尻をどうぞ」も、
原発の話をふんだんにとりいれていました(原発にかわる発電方法を考えたり、原発の不祥事を謝るシーンがある)。
作り手も震災を経て考えたことがあり、
それが舞台に現れているのでは、と思います。

音楽もそうです。
震災後、影響をうけて、
アーティストの歌う曲にも変化があったように思います。
(チャリティーの曲・CDは特にそうですね)
あの地震はそれほど我らの生活観・考え方をがらっとかえさせたものだったのだと思います。

なんといいますか、
当事者にとっては過去の出来事にできるわけではなく、
現在進行形で続いているわけで。
舞台で伝わったこの想いを風化させてしまってはいけないんだな、と思いました。

そんな感じです。
(おわり)